トクホの申請にあたっては,その科学的根拠となる医学的栄養学的データだけでなく成分を同定し,用量を設定,さらに毒性試験や安定性のデータを求められ,臨床試験も要求される。これらは実は40年程前の医薬品の申請に必要な内容に近いものである。このようにトクホはきちんと所定の手続きを経て,厚生労働省により認可をうけたサプリメントであり,科学的根拠をもち,安全性が高いと言われてきた。しかし,実際に効能があるためトクホについてさえ,臨床上いくつかの問題点がある。本来病気の予防,未病状態に摂取すべきサプリメントであるトクホが,病気の治療目的に使われていることがある。自己の責任で重篤な生命にかかわる疾患の治療にトクホが誤用されてしまう。しかし,あくまで健康目的の食品とされているため,消費者も気軽に摂取してしまうのである。いきおい不定期な摂取となることも多い。
例えば血圧の場合,トクホの製品は場合によってはかなり血圧を低下させることがある。血圧が低下し過ぎても事故が起こりうる。そのための不規則な摂取は,かえって以前より血圧が不安定になって心,脳疾患のリスクが高まる。また一時的に血圧が降下したからといってそれまで服用していた降下剤もかってに中止したりするとさらに血圧が不安定化し事故が起り易い。このように現在の制度下では摂取の仕方など消費者への指導に責任をもつ専門 家がいない。
さらに他のトクホや医薬品との相互作用も予期せぬものがある(表4)。4) トクホは効果がないと認可にならないため,最近ではあまり食経験のない植物部位や濃度がトクホに応用されるようになってきた。食経験のないものには慎重に対応すべきである。特に今後医薬品との相互作用はますます多く報告されることが予測される。しかし,システマティックは検証制度がないため時間を要することになるが,その間消費者の安全は誰が責任をもつのであろうか。トクホでない規制以外のサプリメントの危険性は言うまでもない。
また,トクホ取得には臨床試験や毒性試験,薬理試験成分の同定なども必要となっている。3) これらの試験は医薬品に準じるようにはなっているがあくまで日本国内の基準であり,国際的に承認を得たものでない。FDAなどの規制と互換性をどうもたせるかも大きな課題である。またその臨床試験に臨床薬理の専門家が関与しない場合も多く,その質に問題がある。さらに,上記の試験を行えるのは大企業のみであり,現実中小のメーカーには無理である。未だ多くの企業が真面目にQCやトクホに取り組まないでマスコミ等を利用して一時的ブームに便乗しようとするだけのサプリメント業界の体質を変えるにはトクホ制度だけでは不充分である。
本来トクホの制度を作った以上,カプセルや錠剤など医薬品類似の剤型であたかも効能があるように販売形態をとるサプリメントは逆に何らかの規制の対象にすべきと考えられる。一方を放置したままの抜け道のある現制度には問題がある。
| 表4 保健機能食品と医薬品との相互作用 |
| ビタミンA |
テトラサイクリン |
薬剤誘起性頭蓋内圧亢進(激しい頭痛)を強めることがある. |
| ワルファリン |
ワルファリンの作用を増強させる可能性がある. |
| ビタミンB6 |
L-dopa |
L-dopaの作用を減弱させる. |
| 葉酸 |
フェニトイン |
フェニトイン濃度が低下する |
| ビタミンC |
ジエチルスティルベストール,エストロゲン |
血中エストロゲン濃度の上昇. |
| ビタミンD |
ジゴキシン |
ジゴキシン毒性が増す可能性がある. |
| ビタミンK |
ワルファリン |
ワルファリンとの相互作用を示す可能性がある. |
| 「血圧が高めの方の特定保健用食品」(ラクトトリペプチド,鰹節オリゴペプチド,サーデンペプチド) |
ACE阻害薬 |
ACE阻害薬の効果が増強される可能性がある.ACE阻害薬の血液中濃度が変化する可能性がある. |
| 「血糖が気になる方の特定保健用食品」(糖消化性デキストリン,グァバ葉ポリフェノール,小麦アルブミン,L-アラビノース) |
SU剤,インスリン分泌促進剤,インスリン |
医薬品の血糖降下作用が増強される可能性がある. |
| (文献4)より改変) |
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